tsubute ビルドガイド

この記事では、自作キーボードキット tsubute の組み立て方を説明します。

https://2-4kbd.booth.pm/items/2041699

はじめに

キット内容物確認

キット開封後、直ぐに以下の部品が揃っているかご確認ください。 不足がある場合は、お手数ですが作者Twitterまでご連絡ください。 以降のビルドガイドでご不明な点がありました場合も、可能な限り対応いたしますので、ご連絡ください。

品名 個数 備考
実装プレート 1
トッププレート 1
ボトムプレート 1
ボトムシート 1
ネジ(長) 5 M2 L12.0 予備1個を含む
ネジ(短) 5 M2 L4.0 予備1個を含む
スペーサ 5 M2 L4.5 予備1個を含む
Pro Micro 1
コンスル 2
表面実装ダイオード 40 予備2個を含む
タクトスイッチ 1

f:id:nashi_kbd:20200523171938j:plain

キット外で必要な部品

tsubuteをキーボードとして完成させるには、キット内の部品のほかに以下の部品を別途購入する必要があります。

品名 個数 備考
Kailh CPG1232 38 リニア・タクタイル:
https://ja.aliexpress.com/item/4000277394324.html
クリッキー:
https://ja.aliexpress.com/item/32989908397.html
1514C keycap 38 https://make.dmm.com/item/1190156/
tsubute case 1 https://make.dmm.com/item/1185510/
MicroUSBケーブル 1

組み立てに必要な道具

組み立てに際して、最低限以下の道具が必要になります。

  • はんだごて
  • はんだ
  • フラックス
  • 半田吸取線
  • ピンセット
  • 精密ドライバ
  • 両面テープ(布用または強力タイプ)
  • マスキングテープ
  • はさみ

ファームウェア

ビルド環境構築

以下のサイトに従ってqmk_firmwareのビルド環境を構築してください。
https://docs.qmk.fm/#/ja/newbs_getting_started
ただし、途中

  • git clone --recurse-submodules https://github.com/qmk/qmk_firmware.git

を実行する箇所で、代わりに

  • git clone --recurse-submodules -b 2-4kbd https://github.com/2-4kbd/qmk_firmware.git

を実行してください。

デフォルトキーマップ書き込み

Pro Micro にデフォルトキーマップのファームウェアを書き込みます。 以下の手順で進めてください。

  1. カレントディレクトリを"qmk_firmware"にし、以下のコマンドを実行してください。このとき、Pro Micro をPCにUSB接続しておいてください。
    • make 2_4kbd/tsubute/r1:default:avrdude
  2. 表示が「...」の連続になったら、Pro Microの「RST」と「GND」の両方の穴をピンセットで刺して、1秒程度で抜いて下さい。通電し、書き込みが始まります。

デフォルトキーマップのチートシート

  • qmk_firmware/keyboards/2_4kbd/tsubute/keymaps/default/readme.md

にあります。

組み立て

組み立て工程の内容は大きく分けて以下のようになっており、この順番で行います。

  • 半田付け
  • 部品取り付け
  • ネジ留め

はんだ付け

全てのはんだ付け作業で、

  1. パッド・部品を熱する
  2. はんだを流し込む

の手順を徹底してください。 また、プレートをマスキングテープで机に固定すると作業しやすいと思います。

フラックスの塗布、洗浄は適宜行ってください。

はんだ付けをするのは以下の部品です。

コンスル

Pro Microにコンスルーをはんだ付けします。 Helixベータ ビルドガイドコンスルーはんだ付けの説明を参照して行ってください。 特に、

  • コンスルーの向き
  • 斜めになった状態で固定しないこと

に注意してください。 実装プレートに取り付けた状態ではんだ付けするとやりやすいです。

f:id:nashi_kbd:20200523143242j:plainf:id:nashi_kbd:20200523143247j:plain

ダイオード

はじめに予備はんだを乗せます。 図のように、パッドにはんだの山を作ります。 全部で38箇所あります。

f:id:nashi_kbd:20200523143257j:plain

ダイオードには向きがあります。 下図の通りになっていることをよく確認してください。

f:id:nashi_kbd:20200523143301j:plain

両手にピンセットとこてを持ち、ピンセットでダイオードをつまみます。 こてを予備はんだの山に当てて溶かし、そこにダイオードを差し込みます。 ダイオードの位置を合わせたら、先にこてを離して、さらにそこから1秒ほど待ってからピンセット離します。 こてより先にピンセットを離すと、はんだが固まっていないためダイオードの位置がずれます。

その後、ダイオードの反対側のパッドにも半田付けします。

f:id:nashi_kbd:20200523143304j:plain

導通確認

Pro Microを実装プレートに取り付け、PCに接続します。 その状態でスイッチのスルーホールにピンセットを差して通電させ、PCに入力できるか確認します。 入力できないキーがあったら、その箇所のダイオードをはんだ付けし直してください。

確認が終わったらPro Microを取り外しておいてください。

タクトスイッチ

裏面から足を穴に差し込み、表面から半田付けをします。

f:id:nashi_kbd:20200523143310j:plainf:id:nashi_kbd:20200523143314j:plain

キースイッチ

実装プレートとトッププレートを重ね、すべてのキースイッチを取り付けます。 キースイッチのピンを曲げないよう注意してください。 裏面から、スイッチ1個あたり4箇所はんだ付けします。

f:id:nashi_kbd:20200523143318j:plainf:id:nashi_kbd:20200523143324j:plain

導通確認

Pro Microを実装プレートに取り付け、PCに接続します。 その状態でキースイッチを押し、PCに入力できるか確認します。 入力できないキーがあったら、その箇所のキースイッチをはんだ付けし直してください。

終わったらPro Microは取り付けたままにしておいてください。

これで半田付けは完了です。

部品取り付け

Pro Micro

ひとつ前の手順で取り付けてあるはずなので、そのままで構いません。

キーキャップ

すべてのキーにキーキャップを取り付けてください。 1514C keycapには、

  • Normal * 34
  • Homing * 4
  • Convex * 10

が含まれています。適宜使い分けてください。

f:id:nashi_kbd:20200523143328j:plain

ボトムシート

図のようにボトムプレートに両面テープでボトムシートを貼り付けます。 裏表に注意してください。Pro Micro のピン用の穴が右に寄っている面が貼り付け面です。 ネジ穴の周りは両面テープを細く切って貼り付けてください。

f:id:nashi_kbd:20200523143332j:plain

ネジ留め

ボトムプレートとスペーサをネジ(短)で固定します。

f:id:nashi_kbd:20200523143336j:plain

上から実装プレートとケースを被せ、ネジ(長)で固定します。

完成

お疲れ様でした。

f:id:nashi_kbd:20200523143341j:plain


この記事はtsubuteで書きました。

tsubuteをつくった話

梨(@2_4kbd)と申します。 sekiei38 に続いて2つ目のオリジナルのキーボードを設計したので紹介します。

tsubute とは

f:id:nashi_kbd:20200506212527j:plain

  • 38キー・一体型
  • 指の長さに合わせた変則格子配列
  • 15 mm x 14 mm キーピッチ
  • Kailh Mini Choc switch (PG1232) 採用
  • 3D プリンタ製キーキャップ
  • 3D プリンタ製ケース
  • 合皮製ボトムシートによる接地
  • ホットスワップ非対応
  • LED 無し

頒布しています → https://2-4kbd.booth.pm/items/2041699

15 x 14 mm 狭ピッチ

市販されている多くのメンブレンキーボードや Cherry MX 互換スイッチ採用キーボードは、キー同士の間隔(キーピッチ)が 19.05 x 19.05 mm に設定されています。 このスタンダードは海外で生まれたものなので、日本人の手にとってはやや大き過ぎたりします。

自作キーボードでは Kailh Choc switch (PG1350) を採用し、キーピッチを 横 18mm 縦 17mm にしているものもあります。 Choc は MX に比べてスイッチもキーキャップもバリエーションが少なく、打鍵感や外観のカスタマイズは多少なり諦めざるを得なくなりますが、 MX にはできない狭ピッチが実現できます。

私はこの 18 x 17 mm ピッチでも満足できなかったので、さらに小さいピッチのキーボードをつくりました。

-

狭ピッチキーボード作成にあたり、具体的にどれくらいのピッチが使いやすいのか調べるためにピッチお試し基板をつくってみました。

f:id:nashi_kbd:20200509003529j:plainf:id:nashi_kbd:20200509162927j:plain
f:id:nashi_kbd:20200509003537j:plainf:id:nashi_kbd:20200509003532j:plain

Kailh KH Mid-height switch (PG1280) のフットプリントを4つ合体させ、縦のピッチを 13 / 14 / 15 / 16 mm から選べるようにしました。 横のピッチは 16 mm で固定です。

打ってみたところ、以下のような感想になりました。

  • 横のピッチはもう少しだけ狭いとよい(自分の指の間隔と合わせたい)
  • 縦のピッチは狭ければ狭いほど楽
    • ただし、 13 mm と 14 mm ではあまり差がない

以上を踏まえて、横 15 mm 縦 14 mm で決定しました。 縦を 13 mm まで狭めてもよかったんですが、キーキャップがあまり長方形になってしまうとかわいくないなと思ったのでこの寸法にしました。

完全に自分の手のサイズ本意でピッチを決めたので、手が大きい方だとものすごく使いづらいと思います。 逆に Choc キーボードでも大きいと感じているような方は、 tsubute で良い体験が得られるのではないでしょうか。

このキーピッチとレイアウトを体験できる PDF シートをつくりました。 よければ印刷してみてください。

Kailh Mini Choc switch (PG1232) 採用

前述のキーピッチお試し基板では Kailh KH Mid-height switch を採用してしていましたが、これは入手性が良く安価なスイッチの中で最も寸法が小さかったからです。

以下に各種スイッチの寸法と入手性を書き出します。

スイッチ 寸法 (横 x 縦) (mm) 入手性
Cherry MX 互換 switch 15.6 x 15.6
Kailh Choc switch (PG1350) 15.0 x 15.0
Kailh KH Mid-height switch (PG1280) 13.0 x 13.0
Kailh Mini choc switch (PG1232) 14.5 x 13.5
Kailh Sun switch (PG1511B) 15.0 x 15.0
Kailh X switch (PG1425) 14.8 x 14.0
Novelkeys x Kailh The Big Switch Series 55.8 x 62.2

(入手性△・・・Aliexpressでのみ購入可)

これらのうち、15 x 14 mm ピッチが実現できるのは以下のスイッチです。

  • Kailh KH Mid-height switch (PG1280)
  • Kailh Mini choc switch (PG1232)
  • Kailh X switch (PG1425)

X switch は Kailh 純正のキーキャップの寸法が 16.5 mm 四方で、15 x 14 mm ピッチのためにはキーキャップを自作する必要があります。 しかし、スイッチに装着するためのツメが細くて小さく、3D プリントによる自作が難しいと判断し、不採用としました(細くても強度が得られる素材は高価)。 Mid-height switch と Mini Choc switch は、入手性の良さと薄さのどちらを取るかで悩みましたが、パームレストなしで使えることは大きな利点だと感じたので、薄さを取って Mini Choc switch を採用としました。

Kailh Mini Choc switch (PG1232)

f:id:nashi_kbd:20200512091929j:plain

私はこのスイッチのバネを SPRiT Designs の Choc 用バネ 動作圧 25 g のものに換装しています。 Choc のバネと Mini Choc に元々入っていたバネは、径はほぼ同じで、長さは Choc が倍近く長いです。 一応問題なく使えています。 Choc のバネを Mini Choc に入れるとキーを押す前からバネが縮んでいる状態なので実際は 25 g より重く、体感としては底打ちの圧が Choc Red Pro (動作圧 35 g) と同じか少しだけ重いくらいになっています(ちゃんと量っていません)。

また、バネとステムに Krytox GPL 105 を塗っています。 潤滑のためというよりは、バネ鳴り防止の意味が強いです。

指の長さに合わせた変則格子配列

sekiei38 で採用した Treadstone 配列は、格子配列をベースに人差し指のキーを横ずれでホームポジションに近づけたものです。 担当キーの多い人差し指にやさしくして、各指の運指コストが平均化するようになっています。

tsubute のキーレイアウトもまた、格子配列を出発点としています。 row-stagger や格子配列では、長さのある中指と薬指は縮こまってしまいがちですが、中指・薬指の2列を縦にずらすことでこれを解消しています。

f:id:nashi_kbd:20200320194742j:plainf:id:nashi_kbd:20200509203421p:plain

一見、 tsubute 配列は指の長さに合っていない(他の多くの column-stagger キーボードのようなずれ方でない)ように思われるかもしれませんが、このずれ方は自分の打鍵方法と関係しています。

sekiei38 の記事でも触れましたが、私は一体型のキーボードに対して斜めに手を置いて打鍵しています。 なので、手の目線になると、キーボードは下図のようになります。

f:id:nashi_kbd:20200510152252p:plain

よく見られる column-stagger キーボードは左のようなレイアウトになっていると思います。 そして右は手の目線になった(斜めから見た) tsubute 配列です。 この角度だと、ホームポジションの各指は一般的な column-stagger のように、中指が最も高く、小指が最も低くなっています。 青のラインを見ても、左と右で大きな乖離はないことが分かります。

tsubute 配列は正面から見るとおかしなずれ方をしていますが、腕を開いて斜めに手を置くと、一般的な column-stagger と同じように自然な指の曲がりで打鍵できる配列なのです。

また、赤の矢印ラインを見ると、 tsubute を打鍵するときの指先の動きは手に対して斜めになっています。 個人的に、手に対して指を斜めに動かす方が運指コストが低い(指の曲げが少なく済む)と思っていて、この配列にはそういった利点もあります。

3D プリンタ製キーキャップ・ケース

15 x 14 mm ピッチにぴったりはまる choc ステムのキーキャップなんて当然存在せず、必然的に自作する必要がありました。 (Mini Choc switch のキーキャップ嵌合部は Choc switch と同一です)

fusion360 でデータを作成し、DMM.make のナイロン(磨き)にて造形しました。

f:id:nashi_kbd:20200510172713j:plainf:id:nashi_kbd:20200510172710j:plain

プロファイルについて。

狭ピッチだと隣のキーを一緒に押してしまいがちになるだろうと容易に想像できたので、各キーの天面(キートップ部分)同士が離れるようにしてその対策をしたいと考えました。 しかし、キーの間に隙間が空くのはかわいくないので、高さをつけて間に谷ができるようにしました。 また、全体的に丸みを帯びたデザインにして自分好みのかわいい雰囲気にしました。

形状は Normal (Concave) / Convex / Homing の3種類を作成しました。 最下行には天面がふくらんだ Convex をつけて親指が痛くならないようにしています。

ケースについて。

せっかくキーキャップがナイロンのかわいい質感なので、ほかの部分も雰囲気を合わせたくなり、ケースも作成しました(キーキャップのためだけに 3D CAD を覚えるのがもったいないと思ったのもあります)。 キーキャップ以外の本体部分が外から見えないようにするためにハイプロファイルケースにして、キーキャップとは違って直線的はデザインにしました。 この形はキーキャップの丸くて柔らかい雰囲気を目立たたせるため、というのもあるのですが、一番の理由はボトムシートのためです。 キーボード底面に貼り付ける合皮のボトムシート(後述)は手作業で切り出すため、カットが直線だけで済むようにしました。

f:id:nashi_kbd:20200510182118j:plain

ちなみにキーボード本体はトッププレートとボトムプレートをスペーサで固定するサンドウィッチ構成で、その上からケースを被せてネジで固定しています。 ケースはスイッチのマウントに一切関与していないかたちです。 ケースによって打鍵感や音が良くなっている感じはせず、何ならケースが無い方が音に雑味が無いような気さえします(泣)ケースを付けるとプラスチックっぽい高音の成分が増えてるような...。

sekiei38 から引き継いだ要素(38キー・面接地)

38キーは、 MOD キー( Shift や Ctrl など、長押しで機能するキー)をすべて単独で用意してもキーが足りなくならないギリギリの数です。 片手5列にして外形もコンパクトにしました。

面接地は、ゴム足などによる点での接地ではなく、キーボードの底面全体で接地するものです。 合皮での面接地には以下の利点があります。

  • 合皮特有の樹脂感で適度なグリップ力を生み、手で押して滑らせて楽に位置調整できる
  • 別途プレート等を用意することなく、そのままラップトップ PC に乗せて尊師スタイルができる

詳しくはぜひ sekiei38 の記事を。

おわりに

念願の狭ピッチキーボードを形にすることができて満足度が高いです。 tsubute は打鍵感やカスタマイズ性をかなぐり捨ててひたすら楽に打鍵できることを目指して設計しました。 完成して1ヶ月ほど使っていますが、文字入力にかかる労力が確実に減りました。 指を伸ばさなくても、指先の小さな動きだけで文字が打てるのがたのしいです。

見た目も自分好みにかわいくできました。 ケースによって電子工作的な部分を完全に隠していて、マスプロダクトっぽくなってるのも気に入っています。

sekiei38 を設計したときは前例のある要素だけを入れて安全に完成させましたが、 今回はいくつか変わったことをして変わったキーボードを生みました。 変わったことをしたので当然いくらか失敗して遠回りもしましたが、たのしかったです。 その中で得られた知見によってこの記事はできています。 そして、次のキーボードにも...。

現在、tsubute と同じピッチで分離型のキーボードを設計しています。

一体型を使っていて、キーボード割って間に紙の資料が置きたい、と思う場面も少なくなかったので、つくってみることにしました。

  • キーピッチ・スイッチ・キーキャップは tsubute と共通
  • PCB積層
  • column-stagger
  • テンティング機構付き

といった感じになると思います。 まだかかりそうですが、完成が楽しみです。

-

-

-

-

-

-

-

-

-

-

以下ポエム

暇人 物数奇 お時間のある方はお付き合いください。

tsubute のきっかけは天キー3でむらさきさんという方が展示されていた縦 14 mm ピッチキーボードでした。

慣れ親しんだ格子配列で、且つキーの間に隙間が設けてあります。 初めて触るのにとても打ちやすかったです。

このキーボードを見る前から、これ以上楽に打鍵するには Choc より狭ピッチするしかないよな...とは考えていたのですが、どう実現するかを具体的に考え始めたのはこれがきっかけでした。 これ以外にもいろんなキーボードを見ていて、 3D プリントが身近なものに感じられた、というのもあります。

天キー3にはくまお工房さんの Pico Keyboard もあったようなのですが、見逃してしまいました。 こちらは 16.4 mm ピッチで equal-stagger ですね。 自分はシンメトリな配列が好みなのですが、ノーマルな row-stagger やそれに近い配列の狭ピッチも確実に需要があると思うので、刺さる人には刺さるキーボードだと思いました。 写真も撮れていないのでboothページのリンクを👇

狭ピッチお試し基板のキーキャップは Pico Keyboard 用のミニキーキャップを利用させていただきました。 このときはまだ fusion360 に入門する前でしたので大変ありがたかったです。

天キーで刺激を受けてできた最初の tsubute がこれです。

物理配列や構成はこの時点でほぼ固まりましたが、 3D CAD 覚えたてで作ったキーキャップとケースはまだまだ改善の余地がある出来でした。 見た目のかわいさはナイロンの質感とサイズ感に助けられている感じがしますね。 この試作は実はトップマウントケースになっているのですが、特に打鍵感が良かったりはしませんでした。プレートが小さすぎるのか、重量が足りないのか、 Mini Choc switch のポテンシャルが低いのか...。

3D といえば、Lime40 などの 3D キーボードも、やり方が違うだけで「キー同士の距離を小さくする」という点は狭ピッチと同じなんですよね。 MX のオシャレなキーキャップが使えることは狭ピッチには無い強みです。 対して狭ピッチは普通のキーボードからの移行コストが比較的低いことが強みですかね。

-

名付けの話。

sekiei38 はその設計のきっかけとなったキーボード Treadstone48 をリスペクトして、石に関連する語でネーミングしました。 白がイメージカラーなことと、 Treadstone 配列が六角柱っぽく見えたので、「石英」です。 今回もそれに倣って石関連で考え、「小さな石」という意味の「礫」を名前に使いました。

設計中の sazare も、「小さな石」という意味の「さざれ石(細石)」から名前をもらっています。 意味は同じですが、宝石や天然石におけるさざれ石は碁石くらいのサイズのことを言います。 礫がおにぎりくらいのサイズ感なのに対して、 sazare はそれよりも小さな石、というニュアンスを持たせています。分離型なので。

あと数字について。 sekiei38 を設計したときは、キーマップを練りに練って生まれたミニマムな38キーという数字に特別な意味を感じていました。 それで名前にも38を入れたのですが、完成してから半年以上経って、38キーしかないことはもう当たり前のことになってしまいました。 tsubute も38キーですが、そんな理由で名前に数字を入れるのをやめました。

最後に。

tsubute が完成して、一体型キーボードとしては一旦エンドゲームな感じがします。 Mini Choc の打鍵感など、不満がないわけではないですが。

今後は狭ピッチのいろんなキーボードを、つくるかも、つくらないかも。 今のところ sazare 以外はあまり構想がないです。 でもなにかはつくりたいです。たのしいので。


この記事は tsubute で書きました

sekiei38をつくったときの話

梨(@2_4kbd)と申します。 2019年7月にオリジナルのキーボードを設計しました。そのときの思い出話をします。

sekiei38とは

f:id:nashi_kbd:20190824171605j:plain

  • 一体型
  • treadstone配列
  • 横18mm・縦17mmピッチの Kailh Choc スイッチ専用設計
  • 6列目なし38キー
  • Kailhスイッチソケット対応
  • レザーカバーによる面接地

頒布していました→ https://2-4kbd.booth.pm/items/1479069

Choc版Treadstone

sekiei38はTreadstoneシリーズをパクってから着想を得て設計しました。

Treadstone48とNaked48LEDを普段使いしていた頃、

  • Treadstone48はTとYが近いが全体的に運指がバタバタする
  • Naked48LEDはピッチが狭くて楽に打てるが格子配列ゆえにTとYが遠い

という感想を持ち、両者の良いとこ取りをしたキーボードが欲しいと考えました。

Treadstone48を作ってみた | キオクノロンダリング

自作キーボードキット『Naked48LED』を作ったよ! - 自作キーボード温泉街の歩き方

Treadstone配列のすばらしさはmarksardさんのブログ記事を読んでいただければ分かると思います。

メンブレンキーボードの多くや、Cherry MX スイッチ採用のメカニカルキーボードはキーピッチが縦横19.05mmとなっています。 対してNaked48LEDのピッチは 横18mm x 縦17mm です。Naked48LEDは Cherry MX スイッチではなく Kailh Choc スイッチを採用しており、Kailhが出しているChocスイッチ用純正キーキャップの寸法に合わせたピッチに設計されています。 運指を楽にする観点では特に縦のピッチが重要になりますが、縦のピッチは両者でおよそ2mmもの差があります。実際使っていてもChocのピッチは運指が非常に楽でした。

というわけで Choc 18mm x 17mm ピッチのTreadstoneが欲しくなったのですが、無かったので自分で作りました。

手の角度と物理配列

我流の打ち方とTreadstone配列の親和性

私は普段、折れ曲がっていない一体型のキーボードを使う際、キーキャップの向きに対してやや斜めに手を置いて打鍵しています。 手を軽く開いて、小指と人差し指をそれぞれQキー・Tキーに触れ、そのまま手首を机に下ろします。 そうすると中指・薬指・小指がきれいにホームポジションに乗っていい感じに打てるのです。 また一体型のデメリットとして言及されがちな、腕と肩が窮屈な姿勢になる点も、この打ち方であればある程度軽減できます。

f:id:nashi_kbd:20200321174306j:plain f:id:nashi_kbd:20200321175218j:plain

ただし、人差し指だけは他の指より負担がかかってしまいます。ホームポジションに置いた時点で結構指が伸びていて、さらにTキーとYキーは斜めに手を置いてるせいでより遠くなってしまっています。

このような打ち方をしているので、Treadstone配列は自分に合ったすばらしい配列でした。 Treadstone配列は格子配列をベースに、そこからずれを加えて人差し指にやさしくした配列です。人差し指に負担が偏っている先述の打ち方にとてもよく噛み合っています。

さらにsekieiでは、ずれ幅を1/3Uにしています。距離で言うと、

  • MXの1/4Uずれ → 4.75mmずれ
  • Chocの1/4Uずれ → 4.5mmずれ
  • Chocの1/3Uずれ → 6.0mmずれ

となります。MXの1/4Uとは2.75mmもの差があります。実際使っていて人差し指が快適なので正解だったなと思います。

デメリットとしてはZキーが遠くなりすぎたことです。小指は可動範囲が狭いのでより遠く感じます。Zの行に関しては、1/4Uずれのままか、もしくはずれを無しにした方が打ちやすいかもしれません。

親指キーの位置

手を斜めに置く打ち方は、親指キーの位置にも関係します。

f:id:nashi_kbd:20200321124551j:plain

Naked48LEDやHelix、ほとんどのColumn-Staggerの自作キーボードでは、Gキー・Hキーより内側に親指キーが配置されています(画像の赤のキー)。 これはおそらくですが、キーキャップの向きに対してまっすぐ手を置く場合に使うキーだと思います。

手を斜めにすると、赤のキーに親指が届きにくくなります。

f:id:nashi_kbd:20200321130815j:plain

打ちにくい場所にキーがあってもうれしくないですし、ここに置くと外形が大きくなってしまいます。といったかんじでsekieiの親指キーの位置が決定しました。

6列目なし、親指8キー

10人いたら10通りのキーマップがあります。ひとそれぞれ、キーマップそれぞれ。 特にアルファベット以外のキーは、人によってどこに配置するか違いが大きく出ます。 「Ctrlは絶対に小指で打ちたい」「Shiftは親指にしたい」などなど。 自分の場合、「絶対に小指で打ちたいModキー」というものがなかったので、sekieiは6列目をなしにして外形を小さくしました。 小さいキーボードはかわいいのです。

6列目がないので3x10キー部分(アルファベット+記号4キー)以外はすべて親指行に置くことになります。 シンプルに3x10に一行足して親指行10キー・全体40キーとしてもよかったのですが、限界までキー数を減らしたくなって、親指キーの必要数はどれくらいか考えました。

Gherkinなどの30キー前後しかないキーボードはModキーを単独で用意する余裕はないため、Mod-Tap等を利用してアルファベットキーにModキーを兼任させたりします。 私もしばらくMod-Tapを練習したりしたのですが、どうしても慣れることができず諦めました。 Mod-Tap設定したキーの単押し時に入力が若干遅延したり、文字打ち中にModが暴発することがあったり、、、判定時間の設定を突き詰めていけばまた違うのかもしれませんが、、、。

なのでModキーはすべて単独で用意します。 逆に、単押しで機能するキーはすべて3x10エリアの裏レイヤに追いやります。 ひとつだけ例外として、Spaceキーは親指で打つのが身体に染みついてしまっていて動かせなかったので親指に割り当てます。 よって親指行に必要なキーは以下になりました。

  • Space
  • Shift
  • Ctrl
  • Alt
  • Win
  • Raise(レイヤキー)
  • Lower(レイヤキー)

左右対称にするためこれにプラス1キーして合計8キーを親指行のキー数としました。外形もすっきりしていいですね。

f:id:nashi_kbd:20200320194742j:plain

キーボードの接地はゴム足だけじゃない

sekieiにはフェイクレザー(合皮)のカバーを付属しており、これをボトムプレートに包むように貼り付けて使います。一般的なキーボードの場合、ゴムの滑り止めかチルト脚が4隅に付いていてこれで接地しますが、点のみで接地するよりも底面全体で接地できるとうれしいことが多いんじゃないか、というのが私の考えです。

f:id:nashi_kbd:20190824171643j:plain

滑らせて位置調整

机の上でキーボードを打ちやすい位置まで動かすことが多々あると思いますが、ゴム足だとグリップが効きすぎて一度持ち上げないと動きません。 合皮の面接地であれば、手で押して滑らせて楽に位置調整することができます。 キーボード底面と机の間の摩擦がちょうどいいことが前提ですが、たとえばsekieiの合皮カバーと木の机だと、いい具合に滑っていい具合にグリップ力があります。タイピング時もよほどドタバタ打たない限りは勝手に動いたりはしません。

座る姿勢が頻繁に変わる方にとってはこの利点は大きいと思います。浅く座ったり深く座ったりしていると机の上での手の位置も変わるので。自分がそうなのですが。

ちなみに合皮以外に牛さんの本革も試してみたのですが、やや滑りすぎな印象です。打てるには打てますが。 合皮の表面は樹脂でややゴムっぽいのに対して、本革の銀面はつるつるなのでその違いが出ました。 摩擦には重さも関わるので、キーボードの重量が増せば本革でもいい感じになるかもしれません。

らくらく尊師スタイル

簡単に尊師スタイルができるのが面接地の最大の魅力だと思います。

ラップトップPCに自前のキーボード乗せて使いたい場合、アクリルプレートで橋を設けるなどしてビルドインキーボードのキーに重みがかからないようにする必要があります。

面接地であれば、そのまま乗せて使えます。 面接地でもキーの上に乗せてるのは変わらないんだから誤入力されちゃいそうだ、と思われるかもしれませんが、これが全然そんなことはないのです。普通に使えます。

この技は、Yukata-Coverを装着したNaked48LEDをラップトップに乗せて使っていた時に思いつきました。Naked48LEDはふたを畳むとゴム足接地ですが、畳まずに投げ出すと面接地ができます。オリジナルのキーボードを作るときはこれを再現したいなと考えていました。

セクションと関係ない話ですが、sekieiがProMicroを中心に置いている理由もNakedシリーズと同じです(ケーブルの左右両出し対応、キーの左右分割配置で窮屈さを軽減)。sekieiはTreadstoneシリーズとNakedシリーズのキメラだなぁと...。パクってばかりともいう。

おわりに

電子工作歴イコール自作キーボード歴の本物の素人なのですが、半年くらいでオリジナルのキーボードを生み出すことができました。 自作キーボード沼は道がよく整備されています。 sekieiはキーボードの設計としては何も目新しいことはしておらず、ごくシンプルなつくりです。 シンプルですが、個人的なこだわりの詰まったすてきなアイテムになりました。どこまでも Only for me って感じでとても満足しています。

完成してから半年以上経過し、天キーvol3などのイベントを経て、今はまた新しいキーボードを設計しています。

Kailh CPG1232 という寸法の小さいメカニカルキースイッチを使用して、MXやChocには実現できない狭いピッチのキーボードをつくろうとしています。

まだ課題が残っていますが、近いうちに完成させたいです。

(2020/05/12 追記) 完成しました → https://nashi-kbd.hatenablog.com/entry/2020/05/12/203906


この記事はsekiei38で書きました

2019年自キ活振り返り雑記

キーボード#1 Advent Calendar 2019の13日目の記事です。


(@2_4kbd)です。 他の方のアドカレ記事を読んでいたら自分語りがしたくなったので雑記です。 お目汚し失礼いたします。

- -- ---

2019年3月に自作キーボードを始めてそろそろ1年経ちます。 非常に濃い時間でした。 新しい世界で、ずっとわくわくを摂取していました。

いくつかキットを組み立てました。 オリジナルのキーボードもつくりました。 自作キーボードオンリーのイベントに行きました。

そんな1年弱を振り返り、来年はこれしたいあれしたいと喋るだけの記事です。

よろしければお付き合いください。

1月

自作キーボードを知る前です。 キーボードにこだわりはありませんでした。 こだわりはないですが、不満はありました。

  • Hyphen・Backspace・Arrow等の多用するキーが遠い
  • 右手小指に記号が集中
  • 無意味な横ずれ配列が打ちにくい

要はタッチタイピングの障害となる点が不満でした。 右手小指の複雑な記号群を完璧にタッチタイピングすることは至難の業です。私はできませんでした。 数字については、手首を浮かせることでタッチタイピングできましたが、目は画面を向いていても意識がキーボードを向いていました。 これでは意味がありません。口の筋肉に気を回しているようでは上手にお喋りできないのです。

これらの不満うち、一部はAutoHotkeyというツールで解決していました。

www.autohotkey.com

これを使ってAHKスクリプトを作り常駐させることで、キーボードからOSに送られるキーコードを「乗っ取る」ことができます。 例えば、キーボードの"a"を押すと、エディタには"b"が入力される、そんなスクリプトが組めます。(なんのいみが?)

自分の場合、左手で打つControlキーと右手で打つアルファベットを組み合わせて、BackSpace・Delete・Enter・Arrow等を乗っ取り入力できるようにしていました。 これはこれで大変便利で重宝していたのですが、問題がありました。 Shiftを重ねることができないのです。 AHKの仕様で、乗っ取った後のキーはそれ単独でのみOSに渡されるようになっていました(厳密にはもう少し複雑な話があります)。

よって、カーソル移動するときはCtrl+アルファベットで、範囲選択したい場合は現実のShiftキーとArrowキーで...ということになり、運用でカバー!💪を強いられていました。

あまりにも...スマートじゃない...。

加えて、横ずれが打ちにくい問題はハードウェアの話なのでAHKではどうしようもなく、なにか「自由なキーボード」はないかと、ブラウジングをしていました。

そんな折にPlanckというキーボードを見つけました。

olkb.com

上下左右ずれのない超ステキな配列、紹介動画を見てみると英語はなんもわからんがレイヤで複数のキーマップを扱えると。

まさに自分が求めていたキーボード!

それからすぐにHelixというキーボードを見つけ、キーボードを自作する人たちがいること・キットが販売されていて自分で組み立てる必要があること・国内でもキットが販売されていること を知るのにそう時間はかかりませんでした。

yushakobo.jp

「自由なキーボード」の世界がそこに広がっていました。

2月

そうは言ってもやっぱりハードルが高く、即購入はせずにひと月ずっと下調べだけしていました。 情報が多すぎて何をどう調べていたか、さっぱり覚えていませんが...

Planck・Helix・Corne・MiniAxeが選択肢に上がっていたと思います。 理路整然とキーが並んだ格子配列、魅力的でした。全てのキーボードがこうあるべきだ!とすら考えていました。 CorneはちょうどWhiteChocolate仕様のものが発売されていましたね。 当時はCherryやChocが何を意味するのか理解していませんでしたが。

2018年の自キアドカレを読んだりもしていました。 なんもわからんかったですが。 沼にしばらく浸かったあとに再度読むと、理解できる範囲が広がっていて2度楽しめました。

3月

MiniAxeを組み立てました。

kagizaraya.jp

実物は写真以上に小さくてほんとうにかわいいです。 格子配列であることと、36キーというミニマルさが決め手でした。

使用感も満足。 AHKでやりたくてもできなかったことがすべて叶ったことがまずなによりも嬉しかったです。 格子配列にもすぐに慣れました。 記号の位置だけ暗記が必要でしたが、自分で考えたキーマップなのでそれほど時間はかかりませんでした(マップを考える段階でそこそこ暗記できていた)。

紹介記事にある通り組み立て難易度は高かったです。 MCUよりもUSBのコネクタが曲者でした。 足のピッチが狭いのもそうですが、パッドがコネクタ本体で隠れているので暗い・コネクタにぶつかるとずれる で鬼でした。 MCUはちゃんとフラックス使えば大丈夫です。

4月

Naked48LEDを組み立てました。

salicylic-acid3.hatenablog.com

Helix Pico のピッチで格子配列で一体型、という国内自作キーボードは当時Naked48LEDだけだったのではないでしょうか? 自分の求めていた要件に合致したのですぐに食いつきました。 Helix Pico のピッチは、Kailh choc の純正キーキャップにぴったり合わせた横18mm×横17mmです。 手の小さい自分には、これがとても使いやすかったです。 狭ピッチを求めて購入したので期待通りではあるのですが、期待以上に打ちやすくてタイピングが楽しかったです。

(Naked48LEDなのにLEDを実装しなかったの、ちょっと設計者様に申し訳ないきもち。当時も今も、自分のキーボードが光ってほしいという感情がなく...)

5月

なにやら妙な事を考えています。

結局形にはなっていませんが、人の手の形状に合っていないというRow-Staggeredの弱点をRow-Staggeredのまま克服しようとしてました。 設計なんてできないので完全に妄想遊びです。

あとQMKをいじって、日本語配列設定のOS用のキーマップと英語配列設定のOS用のキーマップを切り替えられるようにしました。 これでどちらのOSに対しても同じキーマップで打つことができるようになりました。 Naked48LEDを家と会社両方で使いたかったのですが、家でUSキーボードのノーパソを使っていて、会社のPCの設定を日本語配列のままにしておきたい(いざというときその辺のキーボードが使えない)という状況でした。 自作キーボード、懐が深い。

6月

Treadstone48を組み立てました。

Yが近づいてるの絶対打ちやすい!と思って使ってみたら打ちやすかったです。 横ずれではあるけれど全て1/4Uずれ、シンメトリーでもあるので使用感はほとんど格子配列です。 それでいて人差し指が動きやすいtreadstone配列はすごい発明だと思います。

キーキャップは9009をアリエクで買いました。(ほんとはpaperworkがほしk)

あとキーボード用のTwitter垢をつくりました

7月

オリジナルのキーボードを設計しました。

ざっくり言うと狭ピッチのTreadstoneがほしくなってつくりました。 記事を書いてない...いつか書くのでここではこれくらいで。

余った基板をキットにしてBoothに放流しています。

2-4kbd.booth.pm

8月

モチを買いました。

make.dmm.com

すごくかわいいです。

9月

chocの狭ピッチでも小指がしんどいと感じ始め、物理配列をいろいろ考えていました。

10月

すいかを買いました。

keeb.booth.pm

すごくかわいいです。

Row-StaggeredやColumn-Staggeredにとらわれない物理配列を考えたりしていました。

みなもさん(@X___MOON___X)のことのは『詫寂』、なるさん(@nrtkbb)のuzu42、ぜろけーさん(@zk_phi)のGeminiに見られるMatrix-Staggeredが現れました。 エンドゲームのヒントのような気がします。

11月

ふくさん(@yfuku_)からアイテムをいただいて物理配列をいろいろ試していました。

なかなかしっくりくるものが見つかりません。 もしかして19mmピッチではどうやっても打ちにくいということ...?という考えがよぎります。

あとこれはキーボード関係ないですが、財布をつくりたくなって革細工を始めました。

11月30日と12月

天キーVol.3に行きました。

f:id:nashi_kbd:20191213235441j:plainf:id:nashi_kbd:20191213235442j:plain

キーボードのイベントに行くのは初めてでした。 目の前の全てが刺激的でしたが、縦14mmピッチのキーボードの打ち心地が個人的に刺さりました。

格子配列は決してエルゴノミクスとは言えませんが、それでもこのキーボードが運指が楽だったのです。 上下のキーが数ミリ近いだけでこんなにも楽に打てるのかと...。

これから

狭ピッチ

天キーの狭ピッチキーボードがきっかけで、今はオリジナルキーキャップの制作に興味が向いています。 3Dモデリングなんかやったことないです。これから勉強しなければなりません。 たぶん、やります。わかりませんが。

sekiei紹介記事

書きたいです。 完成してからもう半年経ちますが...。 なんというか、フィーリングで「こうしたい」を詰め込んだので、自分の動機をイマイチ言語化できないままでいました。 天キー3でキーボード紹介セッションをする際にある程度言語化できたので、今なら書ける気がします。

面接地

sekieiのボトムプレートには革が張ってあって、ゴム足ではなくプレート全体で接地するようになっています。 これには利点があって、これもsekiei紹介記事でちゃんと書きます。 今は財布つくって余った牛革を張っていますが、もっといい素材があるのか、革ならどんな革がいいのか、もっと詰めていきたいです。

さいごに

1年分書きましたが、結局、自キを始めたきっかけが書きたかっただけかもしれません。

TwitterでTLを眺めたり、今年の他の方のアドカレ記事を読んでいても、いろんな方がいろんな動機でわざわざキーボードを自作しているんです。 そして自分とは違ういろんな部分にこだわって、個性的なキーボードを生み出しています。 わくわくしませんか? なぜそれを?と訊きたくはなりませんか?

私はこんな経緯でキーボードを自作しました。

あなたは、どうしてキーボードを自作するんですか?


この記事はsekiei38で書きました

sekiei38 r1 ビルドガイド

このエントリでは、自作キーボードキット sekiei38 r1 の組み立て方を説明します。

sekiei38 - 梨野農園 - BOOTH

導入・準備

組み立ての流れ

自作キーボード「sekiei38」を完成させるには、以下の工程が必要です。

  1. ソフトウェア整備
  2. ハードウェア整備
    • 道具を準備
    • キット組み立て

キット内容物確認

キット開封後、直ぐに以下の部品が揃っているかご確認ください。 不足がある場合は、お手数ですが作者Twitterまでご連絡ください。 以降のビルドガイドでご不明な点がありました場合も、可能な限り対応いたしますので、ご連絡ください。

品名 個数 備考
PCB 1
ボトムプレート 1
トッププレート 1
ミドルプレート 1
ボトムプレートカバー 1
kailh スイッチソケット 40 うち予備2
小ねじ M2 L4.5mm 14 うち予備2
小ねじ M2 L3.0mm 14 うち予備2
スペーサー M2 L11.0mm 5 うち予備1
スペーサー M2 L3.0mm 9 うち予備1
表面実装ダイオード 40 うち予備2
タクトスイッチ 1
3.5mm ミニジャック 1
f:id:nashi_kbd:20190824171545j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171448j:plain

キット外で必要な部品

sekiei38をキーボードとして完成させるには、キット内の部品のほかに以下の部品を別途購入する必要があります。 すべて遊舎工房様にて購入できます。

品名 個数 備考
Pro Micro 1
Pro Micro用スプリングピンヘッダ(コンスル―) 2 2本で1セット
Kailh chocスイッチ 38
Kailh chocスイッチ用キーキャップ 1U 38 リンク先の「キーキャップ色:クリア」はsekiei38に使用できません
MicroUSBケーブル 1

組み立てに必要な道具

組み立てに際して、最低限以下の道具が必要になります。

  • 半田ごて
  • 半田
  • フラックス(もしくはフラックス入りの半田を使用する)
  • 半田吸取線(または半田吸取機)
  • ピンセット
  • 精密ドライバ
  • 両面テープ
  • マスキングテープ

ファームウェア

組み立てに入る前にファームウェアの用意をしておきます。 実際のところ組み立てが先でも問題ないのですが、ファームウェア書き込み済みのマイコンを先に用意しておくことで、半田付け後に簡単に導通確認することができるようになります。 半田付けの経験が少ない方やテスターをお持ちでない方は特にこの工程を先に済ませておきましょう。

コンパイル環境構築

以下の記事を読みながら環境構築をしてください。 非常に丁寧に書かれているので躓くことはないかと思います。

QMK firmware ファームウェアの初歩の初歩 1 - キーボード関係ブログ

デフォルトキーマップ書き込み

Pro Microにデフォルトキーマップのファームウェアを書き込みます。 以下の手順で進めてください。

  1. 以下のページの「Clone or download」をクリックし、リポジトリをダウンロード・解凍してください。
  2. "sekiei38"ディレクトリを"qmk_firmware/keyboards"ディレクトリに置いてください。
  3. カレントディレクトリを"qmk_firmware"にし、以下のコマンドを実行してください。このとき、Pro MicroをPCにUSB接続しておいてください。
    • make sekiei38:default:avrdude
  4. 表示が「...」の連続になったら、Pro Microの「RST」と「GND」の両方の穴をピンセットで刺して、1秒程度で抜いて下さい。通電し、書き込みが始まります。
  5. 書き込みが成功しているか簡易テストをします。B4とE6の穴にピンセットを刺し、「y」が入力されることを確かめてください。

組み立て

組み立て工程の内容は大きく分けて

  • 半田付け
  • ボトムプレートカバー貼り付け
  • ネジ止め
  • Pro MIcro・キースイッチ・キーキャップ装着

となっており、この順番で行います。

半田付け

全ての半田付け作業で、

  1. パッドを熱する
  2. 半田を流し込む

の手順を徹底してください。

また、PCBでの半田付け作業は、すべて裏面(パッドがたくさんある面)のみで行います。 裏表に跨って半田付けを行うような事態になったときは、再度このビルドガイドに立ち戻って確認してください。

半田付け作業は、Pro MicroやPCBをマスキングテープで机に固定するとやりやすいと思います。

半田付けが不安な方は、自キ温泉ガイドであるサリチルさんが公開している自作キーボードハンダ付け動画を参考にしてください。

半田付けをするのは以下の部品です。

各半田付けは順番を問いませんが、最もスムーズに作業できるであろう順番で説明していきます。

牛乳を飲む

平常心でなければ良い半田付けはできません。 まずは一杯、飲み干しましょう。

f:id:nashi_kbd:20190824171748j:plain

コンスル

Pro Microにコンスルーを半田付けします。 Helixベータ ビルドガイドコンスルー半田付けの説明を参照して行ってください。 特に、

  • コンスルーの向き
  • 斜めになった状態で固定しないこと

に注意してください。

ダイオード・スイッチソケット

ダイオード・スイッチソケットそれぞれの実装箇所と、実装後の状態を図に示します。

f:id:nashi_kbd:20190824171557j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171753j:plain

予備半田

はじめにダイオードとスイッチソケットの予備半田をいっぺんにしておきます。 図のように、各パーツの片方だけのパッドに半田の山を作ります。

f:id:nashi_kbd:20190824171552j:plain

ダイオード

ダイオードには向きがありますので、図のような向きになっていることをよく確認して半田付けしてください。

f:id:nashi_kbd:20190824171541j:plain

右手にこて、左手にピンセットを持ち、ピンセットでダイオードをつまみます。 こてを予備半田の山に当てて溶かし、そこにダイオードを差し込みます。 ダイオードの位置を合わせたら、先にこてを離して、さらにそこから1秒ほど待ってからピンセット離します。 こてより先にピンセットを離すと、半田が固まっていないためダイオードの位置がずれます。

その後、ダイオードの反対側のパッドにも半田付けします。

スイッチソケット

図のようにスイッチソケットをPCBに乗せていきます。 パッドに半田の山があるのでぐらぐらした状態になりますが、正しいです。

f:id:nashi_kbd:20190824171756j:plain

ダイオード同様に両手に半田ごてとピンセットを持ちます。 ピンセットで、スイッチソケットをPCBに押し付けるように力を加えながら、こてを予備半田に当てます。 すると半田が溶け、スイッチソケットがゆっくり沈み込んでいきます。 最後まで沈んだら、先にこてを離し、1秒ほど待ってからピンセットを離します。

その後、スイッチソケットの反対側のパッドにも半田付けします。

導通確認

完成後のトラブルとして一部のキーが反応しない、というものがありますが、この原因はダイオードやスイッチソケットの半田付け不良であることが多いです。 一見半田でしっかりと固定されて導通もしているようで、実際は導通していないということがあります。 トラブル回避のために、このタイミングで半田付け不良がないかチェックします。

まずPro MicroをPCBの表面に取り付け、PCに接続します。 その状態でソケットの両穴にピンセットを差して通電させ、PCに入力できるか確認します。

f:id:nashi_kbd:20190824171744j:plain

入力できないキーがあったら、その箇所のダイオードとスイッチソケットを半田付けしなおしてください。

確認が終わったらPro Microを取り外しておいてください。

タクトスイッチ・ミニジャック

表面から足を穴に差し込み、裏面から半田付けをします。 マスキングテープで固定するなどして、PCBに部品が密着した状態で仕上げてください。

f:id:nashi_kbd:20190824171739j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171736j:plain

これで半田付けは完了です。

ボトムプレートカバー取り付け

ボトムプレートを包むようにカバーを貼り付けます。

1. 底面

はじめにネジ穴を慎重に合わせ、底面を両面テープで貼り付けます。 1枚目のように、プレート側に両面テープを張り、その上からカバーを被せて穴の位置を見ながら貼り付けます。 貼り付け後、裏返すと2枚目のようになると思います。

f:id:nashi_kbd:20190824171732j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171728j:plain

2. 上辺・下辺

次に各辺のヒレを折り込んで貼り付けます。 順番は 下辺→斜めの辺→上辺→左右の辺 です。

上下の辺は、以下のように両面テープを貼り、折り込んで貼り付けます。

f:id:nashi_kbd:20190824171723j:plain

以下のように、机に押し付けるようにすると上手くいきやすいです。

f:id:nashi_kbd:20190824171720j:plain

3. 左右・斜めの辺

レザーが重なっている部分は先にそれらを1枚に接着して、その上で折り込みます。 この辺りは両面テープよりも瞬間接着剤の方がスムーズかもしれません。

f:id:nashi_kbd:20190824171707j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171703j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171654j:plain

以上でボトムプレートカバーの貼り付けは終了です。

f:id:nashi_kbd:20190824171650j:plain

右上の貼り付けが甘いですが...問題ないです

ネジ止め①

PCB・ボトムプレート・トッププレート・3.0mmネジ8個・4.5㎜ネジ8個・3.0mmスペーサ8個を用意してください。

ボトム側ネジ止め

まず図のように、ボトムプレートの8か所のネジ穴でスペーサを固定します。 このときに使用するのは3.0mmネジです。

f:id:nashi_kbd:20190824171646j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171643j:plain

トップ側ネジ止め

その上にPCB・トッププレートの順で乗せ、ネジで固定します。 このときに使用するのは4.5mmネジです。

f:id:nashi_kbd:20190824171633j:plainf:id:nashi_kbd:20190824171626j:plain

スイッチ装着

キースイッチをはめ込んでいきます。 そこそこ力を入れてパチンとはめます。

f:id:nashi_kbd:20190824171622j:plain

動作確認

スイッチの金属端子が折れてソケットに刺さっていないことがありますので、ここでPro Microを取り付け、PCに接続して動作確認をしてください。 反応しないキーがある場合は、スイッチを付けなおしてください。 場合によってはスイッチの交換が必要になります。

以下の図の右のスイッチは片足が折れており、このままソケットに差し込もうとしても正しく入りません。

f:id:nashi_kbd:20190824171618j:plain

確認が済んだらPro Microは取り外さず、次の工程に進みます。

ネジ止め②

ミドルプレート・3.0mmネジ4個・4.5㎜ネジ4個・11.0㎜スペーサ4個を用意してください。 Pro Microの周りの穴にスペーサを通してその上にミドルプレートを乗せ、ボトムプレート側は4.5㎜ネジ、ミドルプレート側は3.0㎜ネジでネジ止めしてください。

f:id:nashi_kbd:20190824171610j:plain

完成

お好きなキースイッチを装着して完成です!

f:id:nashi_kbd:20190824171605j:plain

お疲れ様でした。しかしまだ作業が残っています。 完成したキーボードをSNSで自慢したり、家族や友人に見せびらかしてください。 また、キーマップやキースイッチを変更したりして自分だけのキーボードを作り上げてみてください。

それでは、よいエンドゲームを。